
事実婚で認められる法的な権利や義務はどこまで
2019-10-18
婚姻届を役所に提出した法律婚の夫婦と、入籍していない事実婚関係の夫婦とでは、法的に認められる権利に違いはあるのでしょうか?また、あるとしたらどのような事柄でしょうか?
今回は、事実婚でも認められる夫婦の法的な権利や義務にまつわる話を詳しく述べていきます。
事実婚でも認められる権利
現在の判例では、一定程度は事実婚の関係を保護することとしており、一般的な夫婦と同じ権利も一定の範囲で認められております。
慰謝料
法律婚の夫婦と変わらず、事実婚の夫婦でも貞操を守る義務があります。そのため、不貞行為の事実があった場合には、相手方は慰謝料を請求する権利があります。
財産分与
事実婚でも同一世帯、同一生計でお互いに協力して暮らしていくのが原則です。婚姻期間中に築いた財産は、共有財産として扱われ、財産分与で半分ずつに分配します。共働きでも、専業主婦でも半部ずつに分配するのが原則です。
ただし、結婚前から所有している財産や、それにより得た利益は、財産分与の対象にはならず、元の所有していたほうに帰属するのが原則です。
認められていない権利
遺産相続権
夫婦間の遺産相続の権利は法律上の婚姻関係を元に判断されます。事実婚は法律上の婚姻関係ではなく、遺産相続の場面では他人のままなので遺産の相続権はありません。もし、遺産を相続させたいのなら、遺言書に書いておけば、相続ではなく遺贈という形で残せます。
この時の注意点は、法律婚とは違い、事実婚の夫婦では配偶者の税額軽減制度を受けることができません。受け取った遺産は課税の対象になるので、税制に気をつけながら生前贈与なども検討すると良いでしょう。
養育費
事実婚では、二人の間にできた子供は母親の戸籍に入ります。そのため、父親は子供を認知しなければ、別れた後に養育費を払う義務はありません。しかし、父親が自分の子供を認知していれば、養育費を払う義務があります。
父親が認知に応じてくれない場合は、認知調停を申立てたり、裁判所に認知を求める訴えを起こすなどの法的な手続きが必要となります。
配偶者控除
事実婚のパートナーは法律上の配偶者ではないため、配偶者控除は受けられません。年収にもよりますが、毎年のことなので、事実婚期間が長期になると、結構な金額になります
権利があるなら義務もある
法律上の夫婦と事実婚では、得られる権利は少し違います。権利があるなら、そこに果たすべき義務もあり、この義務は法律婚の夫婦と同等の物を求められます。
同居義務
単身赴任などの事情がない限り、同じ家に住んで生活する義務です。事実婚では同居していない場合、事実婚関係を証明することがは難しくなることがあります。
扶助義務
お互いに経済的に助け合う義務です。事実婚では共働きの夫婦も多く、家賃や生活費を折半した後に残ったお金は、双方が自由に使ってよい取り決めをしているケースがよくあるでしょう。
この場合は、最低限の生活費を払った上での余剰金の話なので、扶助義務は果たしていると考えることもできます。
協力義務
家事をお互いに分担して、協力してやりましょうという義務です。事実婚では家事分担やその他の協力が取り決められている場合が多く、パートナーの片方が一方的に家で威張り散らしているといったような事例は比較的少ないかもしれません。
貞操義務
慰謝料の権利の話の繰り返しになりますが、事実婚でも浮気はダメです。夫婦はお互いに貞操を守る義務があり、不貞行為を働くと慰謝料請求の対象になることがあります。
まとめ
事実婚と法律婚では、守るべき義務は同じなのに、認められる法的な権利は違います。それでも、夫婦別姓や、お互いを尊重したイーブンな関係などが現代社会にはマッチしていて、事実婚関係を選ぶ人も増えてきました。今後の法整備や事実婚への理解は社会全体の課題といえるでしょう。
そのような背景があるので、事実婚を選ぶならば、お互いによく話し合って、法律婚でも事実婚でも選択した未来が充実した物になるように、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。