
取消できない?契約結婚のメリットとデメリットを知っておこう
2020-01-16
契約結婚という形の結婚に興味を持つ方が増えています。
2016年に放映されたドラマ『逃げ恥(逃げるは恥だが役に立つ)』で契約結婚の模様が描かれたことで、契約結婚という言葉を知った方も少なくないでしょう。海外では、セレブを中心に広く普及している結婚の形でもあります。
ただ、契約結婚には普通の結婚とはやや違う面があるため、メリットやデメリットを知っておかないと、その後の結婚生活で後悔することにもなりかねません。
そこで今回は、契約結婚に対する理解を深めていただくために、メリットとデメリットをご紹介します。
契約結婚とは何か?普通の結婚とどう違う?
契約結婚とは、結婚後に2人の間で守るべきルールを明確に取り決めた上で結婚することです。口約束で終わらせるのではなく、契約書の形で残しておくところに特徴があります。
契約の内容は、家事や生活費の分担、お互いのプライバシーに関すること、どんな場合に離婚するのか、離婚の条件などが中心になることが多いですが、どんなことでも取り決めることができます。
「一生愛し合う」と約束する夫婦もいれば、年数を決めて期間限定で結婚する夫婦もいます。
結婚後に生活していくにつれて2人の関係が馴れ合いになり、結婚前の約束が反故にされることを防ぐために契約書を取り交わしておくのが、契約結婚なのです。
契約結婚は「ニセ」の結婚ではない
「契約結婚」という言葉を表面的にとらえると、「結婚する形をとる契約」のようなニュアンスに解釈する方もいるかもしれません。
しかし、一般に言われる契約結婚は、あくまでも本当に夫婦になる2人が結婚前に契約するものです。
夫婦としての実態がないのに婚姻届を出して形だけの夫婦になる「偽装結婚」とはまったく別のものです。
また、契約結婚をする夫婦の中には、婚姻届を出さない事実婚の夫婦もたくさんいますが、契約結婚とは事実婚の夫婦だけを指す言葉ではありません。
事実婚であっても、正式に婚姻届を提出する法律婚であっても、夫婦としての生活を始める前に契約をするのが契約結婚となります。
約束は守られる!契約結婚のメリットとは
それでは、契約結婚にどんなメリットがあるのかをみていきましょう。
契約結婚のメリットは、なんといっても結婚前に約束したことが口約束だけの場合よりも守られやすいことにあります。
具体的には、以下のようなメリットがあります。
割り切って生活できる
日本では、「家事・育児は妻がするもの」「お金は夫が稼ぐもの」というような価値観が社会全体にまだまだ根付いています。
結婚前に、「家事と育児は公平に分担する」「生活費は半分ずつ負担する」という口約束をしていても、実際の結婚生活では惰性に流されがちになります。
いつの間にか、家事と育児は妻、お金は夫、という生活が定着してしまうのもよくあることです。
しかし、家事や育児・生活費の分担をあらかじめ契約で決めておけば、お互いに約束は守ろうと意識するようになります。
実際の結婚生活の中で負担に感じることがあっても、「契約で決めたことだから」と割り切って役割を分担できるようになります。
割り切って生活することによって、無用なストレスを抱えることがなくなります。
安心して結婚できる
結婚しない人のなかには、結婚できないのではなく、結婚生活に対する不安が大きいために踏み切れない人も多いものです。
どうしても譲れない条件を明確に契約しておけば、結婚生活に対する不安を軽くすることができます。
とりあえず期間限定で結婚し、その後の2人の関係は期間満了したときに見直す形で結婚することもできます。
安心して結婚に踏み切ることが可能になるので、いつまでも結婚できないという事態を防止することができます。
離婚したくなったらスムーズに離婚できる
いったん結婚すると、離婚するのは大変です。離婚するかどうかや、離婚の条件について何年も裁判で争っている夫婦もたくさんいます。
そんな現実を知っているからこそ、結婚に踏み切れない人も多いものです。
どんな場合に離婚するのか、慰謝料や財産分与、子どもの親権などの離婚の条件をあらかじめ取り決めておけば、将来離婚せざるを得なくなったときにスムーズに離婚できるというメリットがあります。
こうしておくことで、離婚の泥沼化を避けることができますし、安心して結婚に踏み切ることもできるでしょう。
後悔しないために、契約結婚のデメリットも知っておこう
契約結婚には普通の結婚にはないメリットがありますが、一方でデメリットもあります。安易に契約結婚をして後悔しないように、デメリットも知っておきましょう。
幸せなムードを味わえないことも
夫婦といえば、何でも許し合える、最も親しい間柄だというイメージがあるものです。そんな結婚に憧れている方も多いことでしょう。
結婚する前に契約書を交わすと、他人行儀な感じがしてしまいます。その後の結婚生活でも制約事項があるため、「何でも許し合える」という関係を築きにくい面があります。
約束事を守ることは大切ですが、そのために心を開くことができず、幸せなムードを味わえないおそれもあるのです。
想定外のことが起こったときに対応しにくい
結婚前にあらゆる事態を想定して契約書を作ったとしても、現実の結婚生活では想定外のことがいろいろと起きるものです。
病気やリストラなどは、いつ発生するか予測できません。家事や相手の実家との付き合いが予想をはるかに超えて大変なことなど、結婚生活を経験してみないとわからないこともたくさんあります。
「休日は必ず外出する」「年に2回ずつはお互いの実家に帰省する」などの取り決めをしていても、杓子定規に守るのは難しい場合もあるでしょう。
想定外の苦労のために約束を守れなかったときに、契約違反を理由に離婚を迫られるおそれもあります。
他の人からの理解を得にくい
契約結婚は、日本ではまだまだ認知度が低いため、親兄弟や友人をはじめとする周囲の人たちに正しく理解してもらえないおそれがあります。
場合によっては、特殊な結婚をしている夫婦として奇異の目で見られて、ストレスを抱えながら生活していかなければならないことにもなりかねません。
結婚前の契約は見直すことを想定しておく
契約結婚のメリットとデメリットをみてきました。
これらのメリット・デメリットはどれも、結婚前の契約は簡単に取り消すことができないことによるものです。
夫婦の間で結んだ契約は、婚姻中はいつでも一方的に取り消すことができます(民法第754条)。しかし、結婚する前にした契約は他人同士の契約なので、一方的に取り消すことはできません。
だからこそ約束が守られるというメリットもあれば、約束に縛られるというデメリットもあるのです。
安心して契約結婚をするためには、契約に期限を設けて、定期的に見直すという条項を入れておいたほうが良いでしょう。期限は長すぎず短すぎず、1~3年くらいの間で決めるのがおすすめです。
まとめ
結婚前に契約をするのは、お互いが幸せになるためです。
一生愛し合うために契約をする夫婦、離婚することを前提に期間限定で結婚する夫婦などさまざまな夫婦がいますが、契約する目的はお互いの幸せを確保するためであるはずです。
大事な約束は守りつつ、お互いを縛りすぎないような契約を、2人で十分に話し合って考えてみましょう。