
事実婚解消でもめたときの対処法
2020-01-18
事実婚の夫婦は、法律上の夫婦とは異なり婚姻届を出していないため、関係を解消するときにも離婚届を出す必要はありません。そのため、別れたくなったら比較的簡単に関係を解消できるというメリットがあります。
しかし、実際には事実婚解消の際に、もめてしまうことも少なくありません。法律上の夫婦が離婚する場合と同じように、慰謝料や財産分与、子どもの問題などでもめたというケースはよくあることなのです。
今回は、事実婚解消でもめたときに、どのように対処すれば良いのかを解説します。
事実婚解消でもめる5つのケース
事実婚には結婚という形に縛られずに、お互いに自由な関係でいられるというメリットがあります。
しかし、夫婦として生活してきた以上は、結婚に関する法律と無関係ではいられません。
具体的に事実婚解消の際にもめやすいのは次の5つのケースです。
慰謝料でもめるケース
事実婚の状態も法律上保護されるため、夫婦関係の破綻を招くような不法行為があった場合には、法律上の夫婦の場合と同様に慰謝料が発生します。慰謝料が認められる場合の金額も、法律上の夫婦の場合とほぼ同等です。
具体的には、浮気や不倫、DV、モラハラなどが原因で、慰謝料請求でもめるケースが多いです。
財産分与でもめるケース
婚姻中に夫婦が共同で築いた財産を離婚するときに分け合うのが財産分与です。事実婚解消の際にも財産分与は認められます。
ただし、事実婚の場合は婚姻期間がいつからいつまでなのかが明確でないことも多く、分け合うべき財産の範囲について、もめるケースが多くあります。
子どもの親権でもめるケース
事実婚であっても、関係を解消する際に2人の間に生まれた子どもをどちらが引き取るかでもめるケースは多いです。
注意が必要なのは、事実婚の場合は、法律婚の夫婦の場合と異なり、手続きをしなければ自動的に母親が親権者になるということです。父親が親権者になるためには、子どもを認知するだけでなく、養子縁組する必要があります。
養育費でもめるケース
子どもがいる夫婦が離婚すると、親権者にならなかった方の親は子どものために養育費を支払う義務を負います。
ただし、事実婚の場合は父親が子どもを認知しなければ、法律上の扶養義務は発生しません。したがって、母親が父親に養育費を請求するためには、認知してもらうことが必要になります。
婚姻費用でもめるケース
夫婦はお互いに生活を支え合う義務があります。たとえ別居しても、離婚が成立するまでは収入が多い側から少ない側へ婚姻費用という名目で生活費を支払う義務があります。
事実婚でも婚姻費用は請求できますが、別居する際には注意が必要です。別居を開始した時点で夫婦としての実態がなくなり、事実婚が解消したものとみなされることが多いため、婚姻費用の請求は難しいのが現実です。
事実婚解消でもめたときはどうすればいいのか
法律上の夫婦が離婚でもめたときには、離婚協議・離婚調停・離婚訴訟を行います。事実婚解消でもめたときも同じように、協議・調停・訴訟によって解決を図ることになります。
ただ、事実婚と法律婚では以下のように対処法が異なります。
事実婚解消の話し合いはもめやすい
法律上の夫婦の場合は、離婚する際に慰謝料などを請求される側も法律上の責任があることは理解しているものです。
それに対して事実婚の場合は、結婚という形をとっていないために法律上の責任があることを理解していない人が多くいます。そもそも責任を負いたくないが故に、事実婚を選択した人も多いです。
事実婚でも法律上の責任がありますが、それを理解しない相手に慰謝料などを請求しても話し合いはなかなか進みません。
そんなときは、弁護士に依頼して話し合いを代行してもらうことがおすすめです。弁護士から相手に対して法律上の責任を冷静に話してもらうことで、解決できる可能性が高まります。
内縁関係調整調停の申立て
当事者同士で話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所へ調停を申し立てることになります。調停では家庭裁判所が調停委員という地元の専門家や有識者を選任します。
中立公平な立場の調停委員を介して話し合うので、解決に向けては話し合いが進みやすくなります。
法律上の夫婦が離婚する際に申し立てるのは「夫婦関係調整調停」ですが、事実婚解消の際に申し立てるのは「内縁関係調整調停」というものです。呼び方が異なりますが、内容はほぼ同じです。
調停では慰謝料や財産分与の問題はもちろん、それ以前に別れる・別れないの問題も話し合うことができます。親権や養育費、婚姻費用については別の調停手続がありますが、実際には内縁関係調整調停のなかで合わせて話し合うこともできます。
調停の申立ては自分でもできますが、有利に進めるためには弁護士に相談したほうが良いでしょう。
訴訟の提起
調停でも話し合いがまとまらない場合は、訴訟を提起することになります。ただし、事実婚と法律婚では訴訟の手続きが異なるので注意が必要です。
法律婚の場合は、離婚問題全体を家庭裁判所の訴訟で争うことができます。それに対して、事実婚の場合は慰謝料問題について一般の損害賠償請求として地方裁判所へ訴訟を提起することになります。
別居がある程度の期間続くと、自動的に事実婚は解消されたものとみなされるようになります。したがって、どうしても別れたくない場合は、調停までの段階で話し合いをまとめる必要があります。
親権や養育費、婚姻費用の問題についても、家庭裁判所の調停または審判で解決を図ることになります。
訴訟の提起は手続きが少し複雑な上に、法的に的確な主張をして、主張した事実を証拠で証明するという技術も必要になります。訴訟を提起する場合は弁護士に依頼することをおすすめします。
まとめ
事実婚解消に不満があっても泣き寝入りするしかないと思っていたり、慰謝料などを請求されても応じる必要はないと思っていた方も多いかもしれません。
しかし、この記事でお伝えしてきたように、事実婚解消の際には、法律婚の解消の場合よりも深刻にもめるケースも少なくないのです。
事実婚解消でもめたときは、ひとりで悩まずに早めに弁護士に相談してみましょう。