外国人と事実婚するときに注意すべき点

2020-01-30

近年、国際的な交流が進み、日本で暮らす外国人が日本人と国際結婚することは珍しくなくなりました。

しかし、国際結婚の場合、手続きが煩雑でハードルが高いということもあって、婚姻届を出さない「事実婚」を選ぶケースも多くなっています。

そこで今回は、外国人と事実婚をする場合に注意すべき点を説明します。

事実婚とはどんなものか

事実婚とは、法律的な婚姻手続きをしないまま、社会慣習上において婚姻とみられる事実関係が成立していることを言います。一般的に婚姻が成立するためには、結婚式や婚姻届を提出することなどの一定の儀式を行う必要がありますが、事実婚は、これら儀式を行わないまま、事実上結婚したのと同じ状態になることを言います。

事実婚と似た概念に「内縁」があります。内縁も、婚姻届を提出しないまま、事実上の婚姻関係が成立している状態ですが、内縁の場合には、婚姻届を出したくても出せないような社会的事情があるために、婚姻届を提出しないのに対して、事実婚は、そういった社会的事情はなく、当事者の自由意思によって、婚姻届を提出しないという点で、異なります。この観点から、事実婚を「選択的事実婚」又は「自発的内縁」と言ったりします。

外国人との事実婚は当事者の意思のみで成立するのが原則

日本人が外国人との間に事実婚を成立させたい場合に、何の手続きも必要ありません。事実婚は、当事者の意思のみで成立しますので、当事者双方に事実婚をする(していく)という意思があれば、それだけで事実婚は成立します。

事実婚は、当事者の意思のみで成立しますから、その解消も、当事者の意思のみで可能です。内縁の場合は、内縁関係を当事者の一方が一方的に破棄した場合には、破棄された側に破棄によって受けた損害の賠償を請求する権利が認められていますが、事実婚の場合には、事実婚に関する公正証書を残している等の一定の場合を除き、そういった請求は認められていません。

外国人と事実婚をする場合に行っておくとよい手続

外国人との事実婚は、当事者の意思のみで成立するので、それについて、法律上義務付けられている手続きはありません。しかし、外国人と事実婚をする場合に、任意的に行っておくと便利な手続きが2つあります。それは、住民票に世帯主との続柄を記入することと、と公正証書の作成です。

当事者の意思のみで成立する事実婚であっても、一定の手続をすることにより、法律婚に準じて、一定のメリットを享受できるようになります。

住民票に世帯主との続柄を記入すること

日本で住民登録を行っている日本人が、日本で住民登録を行っている外国人と事実婚をしており、同居している場合には、日本人を住民票上の世帯主とし、事実婚の相手の外国人を世帯主の夫(未届)又は妻(未届)とすれば、相手の外国人は、一定の条件を満たしていれば、健康保険の被扶養者や、国民年金の第3号被保険者となることができるなど、行政上のメリットを受けることができます。

住民票は、誰がどのように住んでいるかを証明するものなので、法律婚をしていなくても、同居の事実があれば、同一世帯で登録が可能です。事実婚の相手の外国人を住民票上同一世帯としておくことで、事実婚を公的に証明できるようにもなります。

公正証書を作成しておく

当事者の事実婚をするという意思を契約書にまとめて、それを公正証書として公証役場に保管しておけば、万が一、事実婚が当事者に一方から一方的に破棄された場合、事実婚が成立していたことを公正証書で証明できるので、破棄された方が、その損害の賠償を相手方に請求しやすくなります。

事実婚の最大のメリットは法的な手続きをしなくてもよいことですが、それでは、何かトラブルが起こった時に、法的な救済措置を受けることができません。法律婚の場合、不貞行為があった場合や、一方的に婚姻関係が破棄された場合などには、その相手側に損害賠償請求権が認められていますが、法的な手続きを全くしていない事実婚の場合には、そういった請求権が全くありません。

事実婚をするという意思を公正証書として残しておけば、そういったケースでも、法律婚に準じて、救済措置を受けることができます。

外国人との事実婚のデメリット

外国人との事実婚の場合、相手の外国人には原則として配偶者ビザを取得することはできません。

配偶者ビザが取得できない場合には、永住者などでない限り、留学ビザや就職ビザ、投資経営ビザなどで日本に滞在するしかありません。留学ビザや就職ビザなどには、有効期間(5年以内がほとんど)があるので、更新しない限り、期間満了によって日本から出ていかなくてはなりません。日本での就労にも大きな制約が課されます。

従って、事実婚関係を長期間続けることは原則不可能で、それを望むのであれば、やはり正式な国際結婚手続きをして、相手側に配偶者ビザを取得してもらうしかありません。

まとめ

外国人との事実婚の最大のメリットは、国際結婚に関する煩雑な法律手続きをしなくてもよいことです。しかし、その反面、配偶者が社会保険上の被扶養者になれないし、いざという時に法的な救済措置が受けられません。

そのため、同一世帯の未届けの妻(夫)として住民登録を行うことや、事実婚を成立させる意思を公正証書に残しておくことは、比較的簡単にできますので、是非行っておきたいものです。