事実婚で浮気されたら慰謝料はどうなる?

2019-10-20

婚姻届を提出し、法律上で婚姻(以降、法律婚)関係にある夫婦と同様に、事実婚状態の夫婦でも、パートナーに浮気をされたら慰謝料の請求できるのでしょうか?

結論を言いますと、不貞行為の証拠と事実婚状態であることを証明できれば、慰謝料を請求できます。

この場合の浮気は、法律用語で言う不貞行為であり、肉体関係やそれに準ずる行為です。手を繋いだり、食事に行ったりした程度では、個人の見解では浮気でも、法律上基本的には浮気になりませんので、気を付けましょう。

今回は、細かな注意点をあげながら、事実婚の浮気による慰謝料について分かりやすく解説していきます。

慰謝料を請求するには

法律婚の夫婦であれば不貞行為だけを証明すればいいのですが、事実婚では事実婚状態であることも証明しなくてはいけません。

なぜなら、パートナーに「事実婚の認識はなかった」と主張されると、単なる同居人や同棲相手の関係だと判断されるからです。夫婦でなければ貞操を守る義務もなく、個人の自由な意思での恋愛となり、慰謝料を請求することはできません。

事実婚夫婦は浮気するとダメですが、同棲している単なるカップルならば、浮気しても法的に問題はないのです。

なので、慰謝料を請求するには、事実婚と不貞行為の2つの証明が必要になります。

1.事実婚の証明

事実婚状態であったと証明するには、住民票に同一住所で夫(未届)妻(未届)と記載がある、もしくは「事実婚の契約書」を公正証書を作成しているなどの事情があれば、裁判でも有効な証拠になりえます。

そのような公的な書類がない場合は、以下のことを証拠として積み重ね、総合的に証明します。

・賃貸借契約書に同居人ではなく、夫(未届)妻(未届)と記載

・結婚式を挙げた

・双方の両親や友人などの証言

・メールやSNSなどの会話履歴

・電話や会話を録音した音声

2.不貞行為の証明

慰謝料を貰うためには、不貞行為の事実も証明しなくてはいけません。最も有効なのは不貞行為中の写真や動画です。現在はスマホで撮影する人も少なからずいるので、このような物があれば決定的な証拠として使えます。

他にも、以下のようなものが証拠として挙げられます。裁判ではこれらをもとに、不貞行為の事実を総合的に判断します。

・興信所が作成したラブホテルに入る写真や行動の調査報告書

・メールやSNSなどの会話履歴

・電話や会話を録音した音声

・浮気相手に送ったプレゼントのクレジット履歴

・ホテルの領収書

・パートナーの行動を記録した日記や手帳

慰謝料額の相場はどれくらい?

証明に成功したのならば、慰謝料の請求額に話は移ります。法律婚でも事実婚でも貰える慰謝料の額に大きな差はなく、50~300万程度が相場とされています。

不貞行為はあったが、事実婚関係が今後も続いて行く場合は50~100万円。事実婚関係の継続は難しく、破綻して別れてしまう場合は100~300万円ほどが、裁判所で認められる一般的な金額です。

ただし、この金額は不貞行為の期間や相手の状況、こちらが受けた精神的な苦痛などを総合的に判断して増減するので、あくまで目安と考えてください。

裁判では、こちらの慰謝料請求額から減額された金額で決定することが多いので、その分を計算して少し上乗せして請求額を決めることもあるようです。

強制執行認諾文言付公正証書が超便利

裁判に見事に勝利して、慰謝料の受け取りが決まったとします。慰謝料全額を一括で受け取れれば問題ないのですが、例えば慰謝料が300万円だとして、毎月5万円の分割ならば、相手は60ヶ月の5年間支払い続けなくてはいけません。

また、裁判をせずに夫婦での協議の結果、同じように分割で慰謝料の支払いを取り決めた場合、最初のうちは真面目に支払ってしてくれたけれど、やがて支払いが滞ってしまうこともあるでしょう。

そのような時に非常に役に立つのが、強制執行認諾文言付公正証書です。このような公正証書を作成しておけば支払いが滞った場合に、裁判をすることなく財産の差押え等の強制執行の手続ができます。

この公正証書には債務を履行しないとき(支払いが滞った場合)は直ちに強制執行(差押え)に服する旨の陳述をしたという記載があるので、裁判をせずに簡単に差押えの手続に入ることができて便利です。

強制執行認諾文言付公正証書は法律文書ですので、慰謝料の裁判でお世話になった弁護士等に原案の作成を依頼すると安心です。費用を抑えるために自分で作成する場合は、例文やひな形などを予め用意してから、公証役場に行くとよいでしょう。

まとめ

事実婚でも、証拠さえあれば慰謝料はしっかりと貰うことができます。そしてその金額は法律婚の夫婦とほとんど差はありません。

しかし、浮気による慰謝料の未払い率は高いのも事実。もしもの時のために、裁判することなく財産の差し押さえができる強制執行認諾文言付公正証書を作成しておくことをおすすめします。