
事実婚を選ぶメリット・デメリット
2019-12-19
事実婚と言われる、法律的な婚姻手続きによらない結婚の形が徐々に一般的になりつつあります。
事実婚を選ぶ人が増えている背景には、そこにメリットを感じる人がいることは確かです。
しかし、従来の法律婚とは異なることから発生するデメリットもあります。
事実婚を選ぶか検討する際には、メリット・デメリット両面を理解する必要があります。
事実婚を選んだときのメリット
婚姻届を提出して行う従来の結婚、いわゆる法律婚と比較して、事実婚にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
事実婚は手続きが簡単
法律婚は、婚姻届を自治体に提出することで成立します。婚姻届自体は1枚の申請書のようなものですが、それに伴って様々な手続きが派生します。
特に、結婚した2人のどちらかが姓を変更することや、戸籍の記載が変更されることによって生じる手続きは数多く煩雑です。
その点、事実婚は基本的に2人の合意があれば成立します。対外的に証明する必要はありますが、一般的には住民票を移動し、2人の関係性を記載すれば完了です。
手続きが簡単なので、当面は事実婚で良いだろうと判断するカップルもいます。
事実婚なら姓の変更がない
夫婦別姓についての議論も始められつつありますが、現在の制度では結婚したらどちらかが姓を変えて夫婦が同じ姓になる必要があります。
手続きとしても非常に面倒なものです。自治体だけでなく、働いている会社や、利用している銀行、クレジットカード会社、保険会社など、数多くの関係先で姓の変更手続きをしなければなりません。
また、結婚前の姓に愛着があり変更するのに抵抗がある人も多くいます。これらの理由から、法律婚よりも事実婚を選択するカップルも少なくありません。
事実婚は戸籍に記載されない
法律婚をすると、それが戸籍に記載されます。また、もし離婚した場合には、その情報も戸籍に残ります。いわゆる「バツイチ」などと表現されるものです。
これに対して、事実婚は戸籍に記録されることはありません。事実婚の関係を解消しても、同様に記載されません。これをメリットと感じるカップルもいるでしょう。
事実婚なら男女の対等な関係が維持できる
もともと法律婚で想定されている夫婦は、男性が働いて女性が主婦をしつつ子育てをする、というものです。
このモデルに合わせて、健康保険、税金、年金などの公的な仕組みが設定されています。そのため、現在でも、このモデルに合致したカップルは法律婚をすると多くのメリットがあります。
しかし、最近多くなっている、共働きや子供のいないカップルには、法律婚のメリットは少ないと言えます。戸籍も姓も変えず、扶養・被扶養の関係にもならない、という希望も叶えられます。そのため、事実婚をして2人がそれぞれ独立し続け、対等な関係を維持した方が良いと判断するカップルが増えています。
事実婚では親族とのしがらみができにくい
法律婚をすると、自動的に配偶者の家族と親族になります。法的に扶養義務や相続権などが生じるとともに、慣習的にも心理的にも多くの関係性が生まれます。
夫婦間の関係性を第一に考えるカップルは、お互いの家族とのしがらみが生まれることを嫌うことも少なくありません。特に、お互い再婚というようなシニアカップルの場合、それぞれの子供に遺産をスムーズに相続させるために事実婚を選ぶケースも多いようです。
事実婚を選んだときのデメリット
事実婚はカップルの価値観によっては多くのメリットを感じられる形です。ただ、現時点では、法律的には届出をして結婚することが想定されていますので、事実婚にはデメリットも生じます。
事実婚では相続できる財産が限られる
法律婚をした場合には、配偶者が亡くなった際には自動的に遺産の相続権が生まれます。しかし、事実婚ではそれがありません。
賃貸物件に同居していて故人が借主となっていた場合、賃借権だけは相続することも可能です。
ただ、その他の遺産、例えば預金などについては、亡くなった方の法律上の親族などの法的な相続権が優先されます。
遺言書によって事実婚の相手に相続してもらうこともできますが、法律面および税制面では届出をしている婚姻関係には及びません。
事実婚は税金や行政サービスでも制限がある
税務処理や地方自治体が住民に対して行うサービスも、法律婚をしている夫婦が対象となっているものが数多くあります。
税制では扶養控除、行政の行っているサービスでは子育てに関わるものなどがそれに当たります。いわゆる役所の仕組みはなかなか変わりませんので、これから先もしばらくは事実婚のデメリットとして残るでしょう。
一方で、事実婚であっても、企業が社員に家族手当を支給したり、クレジットカード会社が家族カードを発行したり、生命保険の受取人の規定が緩和されたり、メリットを享受できる部分も増えてきてはいます。
子どもが婚外子の扱いを受ける
事実婚の夫婦に子供が生まれた場合、その子は法的には非嫡出子という扱いになります。婚姻関係にない男女間に生まれた子とされ、自動的に母親の戸籍に入ります。父親が認知することは可能ですが、法律的には制限が発生し、法律婚をしている夫婦の子供と完全に同じ境遇を得られるとは言えません。
医療判断などで制限がある
私的自治の原則という言い方がありますが、基本的に自分のことを決めるのは自分自身です。ただ、意識や判断能力がなくなってしまうこともありえます。病気や事故などでそのような状態に陥ることが多いのですが、その場合は家族に治療などの判断が委ねられることがあります。
その際、事実婚の夫婦であることがデメリットになることがあります。例えば、本人の病気の治療方法についての判断を、事実婚の配偶者ができない場合があるのです。法律的には夫婦や家族とは言い切れないので、病院が事実婚の配偶者の判断で治療することを躊躇するのです。
これも法律的に任意代理契約を交わしておくなどの方法はありますが、法律婚では婚姻届だけですべて済むことなので、事実婚のデメリットと言えます。
まだ事実婚に偏見を持つ人も多い
ここまで法律や税金などのデメリットを見てきましたが、やはり最も大きなデメリットは周囲の人たちの態度でしょう。まだまだ事実婚には偏見を持つ人が多いのです。なぜ法的に結婚しないのか、名字を変えないのか、子供がかわいそう、などの言葉や疑問を日々投げかけられるのは大きなストレスになるでしょう。
事実婚が自分たちに合っているかしっかり確認
事実婚の夫婦も増えているとはいえ、各個人の状況によってメリットとデメリットのバランスは異なります。もし事実婚を検討するならば、事実婚が自分たちに適しているか、メリットを多く受けられるか、デメリットはどこか、などをしっかり確認しましょう。
事実婚は2人とも経済的に自立していて、子どもがいないカップルには適していると言われます。もしくは、お互いに元の配偶者と死別したシニアカップルが、結婚はしたいが相続のことなどを考えると事実婚の方が良い、というケースも多いようです。
夫婦の関係、家族の関係は人それぞれです。自分の望んだ形を取るのが最良でしょう。ただ、法律的・社会的な要素も認識して総合的に判断すべきです。