
事実婚の子を認知するときの手続き方法
2020-01-12
近年、実質的には夫婦として暮らしているけれど、婚姻届は出さない事実婚カップルが増えています。2人の間に子どもが生まれても、両親が事実婚のままで子どもを育てていく家庭も珍しくなくなっています。
しかし、何の手続きもとらないでいると、将来、子どもが父親の遺産を相続できなかったり、両親が別れた場合に、母親が父親(内縁の夫)に養育費を請求できなかったりするなどの不都合が生じてきます。
事実婚夫婦の子どもを、法律上の夫婦の子どもと同等に育てていくためには、内縁の夫に子どもを認知する手続きをとってもらわなければなりません。
この記事では、事実婚の子どもを認知するときの手続きや方法を解説します。
事実婚の子は認知の手続きをとらないと父親から守られない
母親とは、出産した事実によって親子関係が認められますし、法律上の夫婦の間に生まれた子どもであれば、父親とも当然に法律上の親子関係が認められます。
それに対して、事実婚の子は認知の手続きをとらないと、父親との法律上の親子関係が認められません。
父親との親子関係が認められないことによる子どものデメリットを、詳しくみてみましょう。
法律上の夫婦の子と事実婚夫婦の子との差
事実婚夫婦の子は、父親との親子関係が認められないことから、法律上の夫婦の子とはさまざまな面で法律的に異なる扱いを受けることになります。
具体的には、以下の点で法律上の夫婦の子と差が出てきます。
・父親の扶養を受ける権利がない
・父親の財産を相続することができない
・母親のみが親権者となり、父親は親権者とならない
・母親の姓しか名乗ることができない
事実婚の家庭でも、円満に暮らしている間は生活上の不利益はありません。
しかし、万が一、関係が悪化して両親が別れた場合、母親は子の父親である内縁の夫に養育費を請求することができません。また、ずっと円満に暮らし続けたとしても、子どもは父親の財産を相続することはできません。
法律上の夫婦の子であれば当然に認められる権利を、事実婚夫婦の子にも保証するためには、認知という手続きをとる必要があるのです。
子どもを認知する具体的な手続き
子どもを認知する手続きは、父親が認知することに同意しているかどうかで大きく異なります。
父親の同意がある場合
父親が認知することに同意している場合は、手続きは簡単です。「認知届」を市区町村役場に提出するだけで完結します。子どもが生まれる前の胎児の段階でも、認知届を提出することができます。
認知届の提出先は、父親の本籍地か住所地、または子どもの本籍地を管轄する市区町村役場です。胎児を認知する場合は、母親の本籍地を管轄する市区町村役場になります。
提出する際に必要なものは、以下のとおりです。
・認知届(父親が署名・押印したもの)
・父親の印鑑
・父親の本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)
本籍地以外の役場に提出する場合は、父親または子どもの戸籍謄本、胎児を認知するときは母親の戸籍謄本も必要になります。
また、胎児を認知する場合は、母親の承諾を認知届に記載するか、承諾書を別途作成して添付する必要があります。
父親の同意がない場合
父親が認知手続きをとることに同意しない場合は、裁判手続きが必要になります。
裁判手続きには調停と訴訟がありますが、まずは調停を申し立てなければならないことになっています。
調停で認知する手続き
家庭裁判所に「認知調停」を申し立てると、調停委員を交えて子どもの認知について話し合うことになります。
調停委員とは、その問題に詳しい専門家や有識者の中から家庭裁判所に選任された、中立公正な立場の人のことです。
調停は、基本的には話し合いによって解決を図る手続きです。しかし、父親が認知を拒否している場合は、本当に親子関係があるのかどうかを確認するためにDNA鑑定を行うのが一般的です。
DNA鑑定にかかる費用は、原則として申し立てた人が負担する必要があります。金額は十数万円が相場です。
DNA鑑定と話し合いの結果、父親が認知の手続きをとることに合意し、家庭裁判所も認知するのが相当と判断すれば、合意に従った審判がくだされます。
この審判が確定すると、子どもが生まれたときにさかのぼって法律上の親子関係が認められます。
ただし、審判が確定してから10日以内に認知届を役所に提出する必要があるのでご注意ください。
この場合は母親が認知届を提出することができますが、審判調書の謄本と確定証明書を家庭裁判所で取得して添付する必要があります。
訴訟で認知する手続き
調停でも父親が認知の手続きをとることに合意しない場合は、訴訟を起こす必要があります。
訴訟では話し合いではなく、父親と子どもが本当の親子であることを証明する手続きです。
ここでもDNA鑑定が最も重要な証拠になりますが、父親がDNA鑑定に協力してくれないケースもあります。
その場合は、母親が子どもを妊娠して出産した経緯を立証して状況証拠とすることになります。
父親がDNA鑑定への協力を拒否するのは身に覚えがあるからに他ならない、という印象を裁判所が持つことも多いので、認知を請求する側が必ずしも不利になるわけではありません。
なお、訴訟で何を証明すればいいのか、どのように証明すればいいのかについては専門的な知識が必要なので、弁護士などの専門家に依頼したほうがいいでしょう。
まとめ
事実婚の家庭が悪いわけではありませんが、認知の手続きをとらないでいると子どもに思わぬ不利益が及ぶ恐れがあります。
認知をする期間に制限はなく、いつでもできますが、この記事を参考に早めに認知の手続きをとることをおすすめします。