契約結婚は事実婚や偽装結婚とどう違う?

2020-01-14

契約結婚は新しい結婚のスタイルのひとつですが、日本では、まだあまり普及していません。

しかし、以前、テレビドラマ『逃げ恥(逃げるは恥だが役に立つ)』で契約結婚をする夫婦が描かれたり、神田うのさんや遠野なぎこさんが婚前契約を結んだりと、なにかと話題になりました。

そのため、契約結婚について何となく知っている方もいらっしゃると思いますが、具体的にどういうものかを知っている方は多くはないかもしれません。

契約結婚とは、どのような形の結婚なのでしょうか?事実婚や偽装結婚とはどう違うのでしょうか?

法律上の問題はないのでしょうか?

この記事で、そんな疑問を解決しましょう。

契約結婚の意味を正確に理解しよう

契約結婚とは、結婚後の2人の間の約束事をあらかじめ取り決めた上で結婚することです。
法律上、「契約結婚」という制度が定められているわけではありませんが、結婚前に交わした契約には法的な効力があります。

どんな夫婦でも、結婚後の生活についてのあれこれを結婚前に話し合っていると思います。

・妻が仕事を続けるかどうか
・給料をどちらが管理するか
・子どもはいつ、何人作るか
・飲みに行くのは週○回まで

他にもさまざまなことを話し合うでしょう。

このような話し合いを口約束で終わらせるのではなく、法的な効力のある契約書の形にした上で結婚するのが契約結婚です。

結婚前に2人で交わす契約のことを「婚前契約」といいます。

どんな契約でも2人の間では有効

契約する内容に制限はなく、どんなことでも盛り込むことができます。

「2年間だけ結婚する。その後の関係は2年後に見直す」というように、結婚期間を定めるのも有効です。「浮気を○回したら離婚」などと離婚条件を定めることもできます。

ただし、常識や法律に反する内容の契約は無効になります。

「浮気したら殴っても構わない」という契約は、公序良俗に反するので無効です。2人の関係を大切にしたいからといって、「親の面倒はみない」と約束しても、親族の扶養義務を定める民法の規定に反するので無効になります。

また、第三者を巻きこむ契約にも注意が必要です。

「住宅ローンの返済は半分ずつ負担する」と取り決めても、住宅ローンを契約したのが夫だけであれば、銀行に対しては夫が全額を返済する義務があります。

この契約も2人の間では有効ですが、夫が銀行に対して「半分は妻に請求してください」と言うことはできません。

契約結婚に対する世間のイメージは良くない?

「契約結婚」という言葉に対して、あまり良いイメージを持てない方も多いのではないでしょうか。

結婚前に約束事を契約書にした夫婦でも、「私たち、契約結婚しました!」と人に言うケースは少ないのかもしれません。

それに、契約結婚というと何となく普通の結婚とは違うという印象を持ってしまうため、事実婚や偽装結婚と混同して理解している方もいらっしゃるようです。

そこで、契約結婚と事実婚や偽装結婚との違いをみていきましょう。

事実婚と契約結婚は相反するものではない

事実婚とは、夫婦として生活している実態はあるにもかかわらず婚姻届を提出せず、法律上の夫婦とはなっていない夫婦の形のことです。

契約結婚は、結婚する前に契約を締結することですが、事実婚の状態になる前に契約することも契約結婚になります。

事実婚は法律上も夫婦になる「法律婚」に相対する概念であり、契約結婚と相反するものではありません。

法律婚としての契約結婚もあれば、事実婚としての契約結婚もあります。

事実婚と法律婚では契約の意味合いが異なることもある

事実婚でも法律婚でも、契約結婚をする場合は、契約書に書く内容はだいたい同じになることが多いです。しかし、2人にとっての契約の意味合いが、事実婚と法律婚では異なる場合があります。

法律婚では、婚姻届を提出すれば世間からも夫婦として認められますが、事実婚は世間からみれば単なる同棲カップルと区別がつかないこともあります。

これから事実婚をしようと考えている当事者としても、将来、性格や意見が合わなくなったときに簡単に関係が壊れてしまうことを恐れているものです。

そこで、婚姻届を出さないからこそ、それに代わるものとして婚前契約書を作り、夫婦としての約束事を取り決めるカップルが増えています。

とはいえ、別れたくなったら簡単に別れられるメリットがあるからこそ事実婚を選択する夫婦もいるので、ケースバイケースではあります。

偽装結婚と契約結婚はまったく別のもの

偽装結婚とは、夫婦として生活している実態がなく、夫婦となる意思もないのに婚姻届を提出し、法律上の夫婦となることをいいます。

契約結婚は事実婚であっても法律婚であっても夫婦としての実態があるので、偽装結婚とはまったく別のものです。

偽装結婚が行われる典型的なケースは、日本に帰化したい外国人と日本人が婚姻届を出す場合です。他にも、法律上の配偶者になることで税金の控除や会社からもらう手当といった特典を受ける目的で行われることもあります。

このような偽装結婚を行うことは、違法です。夫婦となる意思がないのに婚姻届を出すこと自体が、公正証書原本等不実記載罪にあたります。その上、上記の例では入管法違反や詐欺罪に当たることもあります。

これに対して、契約結婚は法律に一切違反することのない適法な結婚です。

契約結婚が違法になることは絶対にないのか

ところが、「これは違法ではないのか?」と思うような契約結婚の例を見聞きしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

例えば、同居はするものの「夫婦生活は一切しない」「同じ部屋で寝ない」「生活費は完全に別会計とする」などという契約を結んでいるケースです。

しかし、このようなケースでは夫婦としての実態がないので、契約結婚にはあたりません。婚姻届を提出していれば、偽装結婚となってしまいます。いわば、偽装結婚した2人が契約を結んでいるだけの状態です。

婚姻届を提出していなければ、ただちに違法になるわけではありません。しかし、事実婚を装うことによって税金や会社からもらう手当などの面で特典を受けると、詐欺罪などの罪に問われることがあります。

契約結婚とは、夫婦の形を装う2人が契約するものではなく、真に夫婦となる2人が契約するものであることを覚えておきましょう。

まとめ

契約結婚とは、ある意味、条件付きで結婚することともいえます。

「契約結婚」という言葉にはあまりプラスのイメージを持てないかもしれませんが、どうしても守ってほしい条件を契約書にしておくことで、安心して結婚に踏み切ることもできるでしょう。

未婚率が上昇し続ける昨今、契約結婚に対する正しい理解が世の中に広まれば、結婚する人が増える可能性もあります。

現在、結婚を迷っている方にとっては、検討してみる価値があるといえるでしょう。