
知っておきたい戸籍の役割
2020-02-03
戸籍とは、ご自身の国籍や身元を証明するための公的な資料として市役所で保管されている書類のことです。この戸籍は、相続をメインとする法務手続の際、非常に重要となってきます。
本記事では、おもに法務手続における戸籍の役割についてまとめています。
戸籍の役割①:相続人の確定
戸籍が法務手続で使用される最も重要な場面は、相続手続です。相続手続の際に、相続人であることを証明することができる唯一の手段が戸籍となります。
例えば、父親のAさん、息子のBさんがいるとして、Aさんが亡くなった場合に息子のBさんはもちろん相続人となります。民法887条1項に「被相続人の子は、相続人となる。」と書かれているためです。
ただ、BさんがAさんの息子であることを公的にどのように証明するのかということが問題となってきます。Bさんとしては、当たり前の気持ちとして「俺がAの息子であることは当然だ!」と思われるでしょう。しかし、Bさんがいかに強く主張されても、客観的にはBさんがAさんの子供であることを証明したことにはなりません。法律的にはあくまでもBさんが、「自分はAの息子である」と主観的に(個人的に)主張しているだけということになります。
このような時にBさんとAさんの親子関係を証明する手段が戸籍となります。戸籍は、出生届などの正式な役所への届け出によって作成され、市役所で厳格に保管されているため、法律の世界ではよほどのことがない限り正しい資料として扱われます。
そのため、BさんがAさんの息子であり、相続人であることの客観的な証明は戸籍によってのみ可能となります。万が一戸籍がない場合には裁判で確定することになりますが、極めて例外です。相続人の確定は、戸籍によってのみ可能となります。
このように、戸籍は相続人を確定するための唯一の手段として機能するという重要な役割があります。
戸籍の役割②:訴訟(裁判)で添付書類としての役割
次に裁判をするときに添付書類として戸籍が必要となるケースがあります。例えば、父親からの認知(にんち・父子関係を認めさせることを言います)を求めて、未成年者が原告となって裁判をするような場合、未成年者が裁判上の行為をすることは例外的な場合(結婚をしていて成年者として扱われる場合など)を除いて、基本的には認められていません。
そのため、母親などの法定代理人が未成年者に代わって訴訟代理人となることが必要となります。(民事訴訟法31条「未成年者及び成年被後見人は、法定代理人によらなければ、訴訟行為をすることができない。ただし、未成年者が独立して法律行為をすることができる場合は、この限りでない。」)
このように身分関係に関する裁判を起こしたい場合や当事者が未成年者である場合には、身分関係や法定代理人を裏付ける添付書類として、訴状とともに、戸籍謄本を付けることが必要となります。
戸籍の役割③:その他
戸籍は相続手続や訴訟で使われますが、その他にも各種行政手続の際の本人確認のため、あるいは、銀行で故人の預貯金を引き出す際の添付書類として使うなどさまざまな場面で使われることがあります。しかし、どの手続でも共通しているのはあくまでも「その人が誰であるかを間違いなく確認したい」という必要性がある時に戸籍が必要となるということです。
なお、ユニークな戸籍の使い方、役割として、家系図を作成するために戸籍を利用するという方法があります。戸籍を可能な限り遡りつつ、お寺なども回って家系図を作り、ご自身、ご家族のルーツをたどるという使い方です。一部の業者や行政書士などが行っているようです。
まとめ
現時点では法務手続において、戸籍以上に信用される本人確認手段は、ほぼないといっても過言ではありません。将来的にはDNAなどの技術で確認されることもあるかもしれませんが、法務の世界はなかなか古い考えから抜け出すことができない業界ですから、戸籍の役割が大きい状況はまだまだ続くと思われます。
戸籍は法務手続上、極めて重要となるということをご理解いただけましたらとてもありがたく存じます。