夫と死別…旧姓に戻すための「復氏届」「姻族関係終了届」について

2019-11-25

核家族化が進み、義理の両親や親戚付き合いの在り方にも変化が生じている現代。

一度嫁入りをすれば生涯をかけて嫁ぎ先のために尽くす、という考えは一昔前のものとなりつつあります。

今回は、死別後に新たな人生の第一歩を踏み出したいという女性のために有効となる制度を紹介します。

※今回紹介する制度は男女どちらでも利用することが出来ますが、女性が利用することが大半であることから夫に先立たれた女性を対象にした内容としています

復氏届とは

夫の死後に夫の姓から旧姓に戻すための手続きで、本籍地や住所地のある市区町村役場の窓口で行うことが可能です。

手続きを行うと旧姓に戻るだけでなく、夫の戸籍から抜けることにもなります。

戸籍から抜けた後は、以下のいずれかを選択します。

・結婚前の戸籍に戻る(両親の他界や兄弟の独立等によって結婚前に入っていた戸籍が除籍になっていない場合)
・結婚前の戸籍に戻りたくない(れない)場合は、分籍届を出して自らを筆頭者に新たな戸籍を取得する

提出の際の要件

復氏届を提出する際の要件は以下の通りです。

届出人:亡くなった方の配偶者
提出先:届出人の本籍地(住所のある市区町村役場でもよい)
用意が必要なもの:復氏届、戸籍謄本(本籍地に提出する場合は不要)、印鑑
提出期限:なし(死亡届が受理されていることが前提)。なお、国際結婚で亡くなった夫が外国人の場合は、「他界した翌日から3ヶ月」以内に復氏届に代わって、「外国人との離婚による氏の変更届」の提出が求められます。その期限を超過すると家庭裁判所の許可が必要となります。

手続きの際は、夫の血族や家庭裁判所の許可は不要となっており、残された者の意思のみで行うことができます。

復氏届の手続きを済ませても、夫の血族との姻族関係は継続するため注意しましょう。(特別の事情があるときは家庭裁判所は、三親等内の親族に扶養の義務を負わせることができると定められているため、夫の血族と姻族関係が継続していると夫の血族を扶養する義務を負う可能性があります。)

姻族関係(義理の両親の扶養義務など)を解消したい場合は、後述の婚姻関係修了届の手続きが別途必要となります。

復氏届のメリット

復氏届の効力は、本人の姓の変更に限定されます。相続の権利が消滅したり、遺族年金が受け取れなくなったりといったことはありません。

ただし、マイナスの遺産(借金)が残っている場合は、それらも相続してしまうことになるため、状況に応じて相続の放棄をした方が良い場合もあります。

相続を放棄する場合は、被相続人が亡くなってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てましょう。

復氏届のデメリット

夫側の親族との対立を生む可能性があります。現状では問題にならなくても、いずれ何かしらの事情で助けが必要になったときに、援助を受けられない場合があることを覚悟する必要があるでしょう。

子どもの姓も戻したい場合

子どもの姓も戻して自分の戸籍に入れたい場合には、「子の氏の変更許可申立書」を家庭裁判所へ提出し、許可を得た後に「入籍届」を提出する必要があります。

提出する際の要件は以下の通りです。

・子の氏の変更許可申立書
申立人:子本人(本人が15歳未満のときは親などの法定代理人)
提出先:申立人の住所地の家庭裁判所
用意が必要なもの:子の氏の変更許可申立書、子と父母の戸籍謄本
費用:800円の収入印紙、連絡用の郵便切手(家庭裁判所によって異なる)

・入籍届
申立人:子本人(子が15歳未満のときは子の法定代理人)
提出先:子の本籍地、または届出人の住所地の市区町村役場
用意が必要なもの:入籍届、氏の変更許可の審判書(家庭裁判所が用意)、現在の戸籍謄本と入籍先の戸籍謄本、印鑑

姻族関係終了届とは

婚姻を結ぶと、互いに配偶者の血族(親兄弟など)と法律上の関係(姻族関係)が生じます。そして、この関係は配偶者が亡くなった後も継続されることになっています(離婚をした場合にはこの関係は自動的に消滅)。

姻族関係終了届は、この姻族関係を終了させるための手続きで、復氏届と同様に本籍地や住所のある市区町村役場で行うことが可能です。

ちなみに、姻族関係の解消後も戸籍はそのまま残るため、戸籍からも抜けたい場合は復氏届の手続きや必要に応じて分籍の手続きを別途行いましょう。

提出する際の要件

姻族関係終了届を提出する際の要件は以下の通りです。

届出人:亡くなった方の配偶者
提出先:届出人の本籍地(住所のある市区町村役場でもよい)
用意が必要なもの:姻族関係終了届、戸籍謄本、印鑑
提出期限:なし(死亡届が受理されていることが前提)

手続きの際は、夫の親族の了承などは不要となっており、残された者の意思のみで行うことが出来ます。

姻族関係終了届のメリット

自分の意思のみで姻族関係を消滅できるのが最大のメリットで、戸籍を見ない限りは手続きを行ったことが相手に知られることもありません。

また、相続の権利が消滅することはなく、再婚などしない限りは遺族年金を受給することもできます。

多額の借金があるなどの理由により相続を放棄する場合は、被相続人が亡くなってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります。

子どもがいる場合は、その子どもが義理の両親の相続人となるため、亡くなった夫に代わり遺産を相続できる点もメリットです。

姻族関係終了届のデメリット

一度手続きを済ませてしまうと取り消すことはできず、再度関係を築くためには養子縁組を行わなければなりません。

また、夫側の親族との関係が悪化することで、万が一の際などに、経済的援助などの助けを得ることが難しくなる可能性もあります。

まとめ

残された女性が新たな人生のスタートを切るために、「復氏届」や「姻族関係終了届」を提出することは大きなメリットと言えます。

ただし、これまでの夫側の親族との関係がこじれる可能性もあり、その後の人生にとってマイナスとなることもあるかもしれません。

手続きを済ませてしまうと撤回はできないため、一時の感情に飲み込まれることなく、冷静に提出するか否かの判断をしましょう。