
相続人を正確に特定する方法
2019-12-07
相続開始後の手続きは、想像以上に複雑なものとなる場合も少なくありません。相続人を正確に特定するための調査も、その手続きの流れのなかに位置づけられ、場合によっては戸籍謄本等の取得に半年から1年あまりかかってしまうケースもあります。そこで、本記事では相続人の特定方法について説明します。
相続人特定の必要性
相続が開始した場合、最終的には故人の遺産を相続人の間で分割する必要があります。いわゆる遺産分割です。また、遺産の額によっては相続税の納付義務も生じます。
このような手続きの前提として、まずは相続人がいったい誰になるのかを特定しなければ手続きを進めることができません。
相続人は戸籍謄本で特定する
相続人を特定するための方法は、戸籍謄本を集めることです。
戸籍謄本以外で相続人を特定することは、事実上認められません。例えば、「私が相続人です」などと記載した上申書を作成・提出しても、法務局ではまったく相手にしてもらえません。戸籍謄本以外の書面で相続人の特定に使用することができるのは判決書くらいです。ただ、その場合には裁判を通じて相続人であることを確認してもらう必要があります。
どのような戸籍謄本が必要か
原則として、故人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を集める必要があります。それに加えて、どの範囲の親族らの戸籍謄本まで必要になるかは、被相続人をめぐる親族関係の実情に応じてケースバイケースとなります。
戸籍謄本は、誰が相続人になれるかを定める民法第886条以下の規定を踏まえた上で、必要な範囲で集める必要があります。
後述のとおり、相続人の特定は司法書士などの専門家に相談するのがおすすめですが、ご自身で戸籍謄本を収集する場合には、法務局に相談してから行うのが効率的です。
相続人の特定が困難な場合の対処法
次に、戸籍謄本の収集ができないため、相続人の特定が困難な場合の対処法を説明します。
戸籍が存在しない場合
除籍謄本や改製原戸籍の保存期間が過ぎてしまったため存在しないケースはかなりあります。
また、火災、とりわけ、太平洋戦争の際の戦火で焼失しているということもあります。
このようなときには、市町村長作成の「除籍等の謄本を交付することができない」旨の証明書を得ることで相続人を特定することができます(法務省民事局通達)。
相続をめぐる法律関係が極めて複雑な場合
さらに、戸籍は存在しているものの、相続をめぐる法律関係が極めて複雑なケースもあります。
昔は、子どもが多い家庭が多かったことから、相続人の数が100人を超すケースも珍しくはありませんでした。また、戸籍謄本を保管している市役所が遠方であったり、市町村合併や県境の変化などのため、戸籍がどこの市役所に保管されているのかがすぐにはわからないというケースもあります。
そうなると、戸籍謄本の収集だけでかなりの時間がかかってしまうこともあります。このような場合には、専門家報酬を支払う必要はありますが、時間や労力を考えれば専門家に相談・依頼するのをおすすめします。
司法書士、税理士、相続関係を手がける一部の行政書士などが相続人特定の専門家です。なお、既に相続人間で争いが生じてしまっている場合は弁護士に相談しましょう。
まとめ
相続手続きは戸籍謄本の収集から始まると言っても過言ではありません。相続人を過不足なく正確に特定することは、相続の手続きを進めるための「はじめの一歩」なのです。
ご自身で行うか、司法書士等の専門家に相談するかなども含めて、まずはご家族や親族で話し合うことから始めるとよいでしょう。