相続人が未成年者の場合の対処法

2019-12-09

相続が発生した場合に、相続人に未成年者が含まれるというケースは決して少なくありません。未成年者が相続人に含まれる場合には、一般の相続手続きとは異なる点が生じます。

本記事では、相続人に未成年者がいる場合の対処法について、解説します。

すべての手続きを親が代理できるわけじゃない

未成年者が相続人の場合、一般的には「子どものことだから親(親権者)が代わりにやればいい」とお考えになるケースが少なくありません。

確かに、民法上、親権者は未成年者の子の法定代理人として(民法第824条)、相続の場合も含めて財産の管理をすることができます。

例えば、親権者も同時に相続放棄する等の場合に、親権者が子を代理して相続放棄の手続きをすることには問題はありません。この場合は下で説明する利益相反行為とは言えないと考えられるからです。

しかし、親も共同相続人になる場合、親が子を代理して遺産分割を行うことはできません。例えば、父が亡くなり、母と未成年者の子が相続人となった場合には、母は子を代理して遺産分割をすることができません。これは、母と子の利益が相反してしまうからです。これを、利益相反行為といいます。

このように、未成年者の相続人がいる場合には、親権者の権限が制限されてしまう場合があります。

特別代理人を利用する

「親が口出しできないことがあるならば、どうやって手続きを進めればいいのか」ということになります。このような場合には、未成年者のために特別代理人を選任することになります。

特別代理人とは、親と子の利益が相反する場合に、子の利益のために、親権者の代わりに「特別」に「代理人」となる人のことをいいます。

そのため、親と未成年者の子の遺産分割は、親と特別代理人で行うことになります。

ご参考までに、特別代理人に関する法律の条文を掲載します。

 民法第826条
「親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。」

特別代理人の選任には家庭裁判所への申立てが必要

特別代理人は、個人間で自由に選ぶことはできず、家庭裁判所に選任の申立てをする必要があります。家裁が認めた人でないと特別代理人にはなれないのです。

特別代理人の選任申立書は、裁判所のホームページからダウンロードすることができます。

ただ、実際に家裁に申立てをする場合には、子1人について800円分の収入印紙が必要です。

また、申立てにあたっては、さまざまな添付書類を用意する必要があります。さらに、後述のとおり、必要事項の記載(申立ての詳細の記載)に注意しないと選任が認められない場合もあります。

特別代理人の選任の申立ての際に注意すべき点

特別代理人の選任の申立書においては、申立ての趣旨として「特別代理人の選任を求める。」と記載した上で、「申立ての理由」を詳細に記載する必要があります。つまり、特別代理人を選任する必要があることについて、裁判官を納得させられるだけの文章に仕上げなければなりません。

この場合に注意すべき点として、未成年者の利益を損なうような特別代理人の選任申立てについては、裁判所は消極的な態度(認めにくい)を示す傾向があるという点です。

例えば、未成年者に全く相続させない遺産分割をするために特別代理人の選任申立てをすると、難色を示されることがあります。裁判所の役割は、選任に関する単なる事務手続にとどまらず、子の福祉(子どもの利益)を守れる代理人なのかをチェックすることにあるからです。

それゆえ、特別代理人の選任の際は、子の福祉にもしっかりと配慮された申立書を作る必要があります。

まとめ

相続人に未成年者がいる場合、遺産分割を中心として、特別代理人の選任というややイレギュラーな手続が必要となります。未成年者の相続人がおられる場合には、専門家に相談することも有益ですが、重要な視点は、子の利益を守れるかどうかです。

このような視点から事案を検討していけば、どうすればよいのかあたりをつけることもできるかもしれません。