
遺族基礎年金を受給できない場合は「寡婦年金」の確認を!
2019-12-25
国民年金にしか加入していない第1号被保険者(自営業者など)が亡くなったとき、その配偶者である妻は、遺族厚生年金はもちろん、遺族基礎年金も受給することができない場合があります。
それでは、亡くなった夫が納めてきた国民年金保険料が掛け捨てになってしまい、あまりに気の毒です。
これを防止するとともに、妻の老後の初期の生活を支えることを目的とし、遺族基礎年金に代わるものとして寡婦年金という制度が設けられています。
寡婦年金とは
寡婦年金は、自営業などの夫が次に説明する要件に該当し、年金をもらわずに亡くなったときに、残された妻が60歳から65歳になるまでの5年間、老齢基礎年金を受給するまでの“つなぎ”として受給できる年金です。
寡婦年金をもらえる要件
寡婦年金は、下記の要件にすべて該当するときに、妻が受給することができます。
⑴自営業などの国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間(保険料免除期間を含む)が10年以上ある夫が亡くなったこと
⑵10年以上継続して婚姻関係にあること(事実婚を含む)
⑶妻が夫に生計を維持されていたこと
⑷夫が老齢基礎年金を受けていないこと、または、障害基礎年金の受給権がないこと
⑸妻が、夫の死亡時に65歳未満で、60歳になったこと
寡婦年金を受給するときの注意点
夫が亡くなった当時60歳未満である妻には60歳になった月の翌月から、また、夫が亡くなった当時60歳から65歳未満である妻には夫が亡くなった月の翌月から、寡婦年金が支給されます。
寡婦年金は、国民年金のみに加入している自営業など第1号被保険者が亡くなったときの独自の給付ですから、厚生年金と国民年金に加入している会社員・公務員など第2号被保険者が亡くなっても、寡婦年金は支給されません。
寡婦年金と死亡一時金の両方の受給資格がある場合は、どちらか一方を選ぶことになります。
ポイント!
寡婦年金は、妻が60歳にならないと受給することができません。
寡婦年金をもらえなくなる場合
寡婦年金は、妻が下記の要件に該当する場合、受給権がなくなります(失権)。
⑴65歳になったとき
⑵亡くなったとき
⑶再婚したとき
⑷直系血族または直系姻族以外の者の養子となったとき
⑸老齢基礎年金の繰上げ支給を受けたとき
寡婦年金額の算出方法
寡婦年金額は、夫が生きていた場合にもらえるはずであった老齢基礎年金額(第1号被保険者として保険料納付済期間と保険料免除期間から計算した額)の4分の3です。
一律に計算するのではなく、加入可能期間も、亡くなった夫の生年月日に応じて異なります。
したがって、寡婦年金額は、下記の各老齢基礎年金額の4分の3になります。
⑴基本となる老齢基礎年金額の計算式
78万0100円×{(保険料納付済期間の月数)÷(加入可能年数×12月)}
⑵保険料全額免除期間あるいは保険料1部納付済期間(保険料1部免除期間)のある人の老齢基礎年金額の計算式
①大正15年4月2日から昭和16年4月1日生まれの人の老齢基礎年金額の計算式
78万0100円×{(保険料納付済期間の月数+保険料全額免除期間の月数×1/3+保険料4分の1納付済期間の月数×1/2+保険料半額納付済期間の月数×2/3+保険料4分の3納付済期間の月数×5/6)÷(加入可能年数×12月)}
➁昭和16年4月2日以降に生まれた人の老齢基礎年金額の計算式
71万0100円×{(保険料納付済期間の月数+保険料全額免除期間の月数×1/2+保険料4分の1納付済期間の月数×5/8+保険料半額納付済期間の月数×3/4+保険料4分の3納付済期間の月数×7/8)÷(加入可能年数×12月)}
ただし、平成21年3月分までは、全額免除に関しては3分の1、4分の1納付に関しては2分の1、半額納付に関しては3分の2、4分の3納付に関しては6分の5で、それぞれ計算されます。
なお、上記78万0100円は、平成31年度額です。
ポイント!
老齢基礎年金額の4分の3が、寡婦年金として支給されます。
寡婦年金を請求する方法
寡婦年金を受給するためには、請求手続きをしなければなりません。
寡婦年金を請求する場合は、受給するための書類一式を準備したうえで請求を行います。
寡婦年金に関する年金請求書(国民年金寡婦年金)の提出先は、住所地の市・区役所または町村役場の窓口になります。また、年金事務所および年金相談センターでも手続きができます。
寡婦年金を請求するのに必要な書類
下表が、寡婦年金の申請時に必要な書類一式です。
年金請求書(国民年金寡婦年金) | 様式およびその記入例は、日本年金機構ホームページからダウンロードすることができます |
年金手帳 | 亡くなった人のもの |
戸籍謄本(記載事項証明書) | 亡くなった人と請求者の関係 受給権発生年月日以降で6か月以内に交付されたもの |
世帯全員の住民票の写し | 亡くなった人との生計維持関係確認のため |
亡くなった人の住民票の除票 | 世帯全員の住民票の写しに含まれている場合は不要 |
年金証書 | 公的年金から年金を受けているとき |
請求者の収入が確認できる書類 | 生計維持認定のため 所得証明書、課税(非課税)証明書、源泉徴収票等 |
預金通帳等 | 請求者名義のもので、預金通帳またはキャッシュカード(写しも可)等 |
印鑑 | 認印可 |
※年金請求書(国民年金寡婦年金)は、住所地の市・区役所、町村役場または年金事務所、年金相談センターにあります。
ポイント!
年金手帳を提出できないときは、その理由が必要です。
寡婦年金を請求する場合は、事前に、必要書類等も含めて、市・区役所または町村役場の国民年金の窓口、あるいは、年金事務所または年金相談センターで相談するようにしましょう。
寡婦年金請求のために提出した住民票等を年金請求以外で利用する場合は、それらの原本を返してもらうことができます。