遺言執行者(遺言執行人)とは何者?

2020-02-17

遺言執行者や遺言執行人という言葉を聞いたことがあるものの、正確な意味は分からないという方も多いのではないでしょうか。遺言執行者がいないと相続手続ができないと考えている方もいらっしゃるかもしれません。

本記事では、遺言執行者(遺言執行人)とはどういう人なのかを解説していきます。

遺言執行者(遺言執行人)とは

遺言執行者とは、遺言書に書かれたとおりに相続を実現させるためのさまざまな手続きを実際に行う人のことをいいます。

俗に「遺言執行人」と呼ばれることもありますが、法律上の正確な名称は「遺言執行者」といいます。

遺言書で遺言執行者が指定されていれば原則としてその人が遺言執行者となります。遺言書で指定されていない場合や指定された人が断ったような場合は、家庭裁判所で遺言執行者を選任することもできます。

遺言執行者になるために資格などは必要なく、未成年者と破産者以外は誰でもなることができます。相続人のなかから選任される場合もありますし、弁護士などの専門家が選任される場合もあります。

遺言執行者の役割

被相続人は何らかの思いを込めて遺言書で遺産分割方法を指定します。しかし、その内容を実現するためには誰かがさまざまな手続きを行わなければなりません。

そんな被相続人に代わってその思いを実現するのが、遺言執行者の役割です。遺言執行者は、相続財産を管理した上で、遺言の内容を実現するために必要な一切のことを行います。

具体的には、預貯金口座の名義変更や不動産の遺贈の登記、自動車や有価証券の名義変更、相続財産の売却(換価)など相続に関する全ての手続きを行います。

遺言執行者に課される義務

遺言執行者が行う全ての行為には、相続人の利害が関わっています。そのため、遺言執行者が相続財産を管理する際には、善良な管理者としての注意義務が課されています。

その他にも、遺言執行者には以下のような手続きを行う義務があります。

  • 遺言執行者への就任を承諾したことを相続人全員に通知
  • 遺言執行者はその任務を開始したときは遺言の内容を相続人全員に通知
  • 相続財産の調査
  • 相続人の調査(戸籍謄本等の書類の収集)
  • 財産目録を作成し、相続人全員に交付
  • 任務が終了後、相続人全員に完了報告

遺言執行者には以上の義務や役割が課される反面、手続きに要した費用や報酬を相続財産の中から受け取る権利もあります。

遺言執行者を選任するメリット

相続に関する手続きは、基本的に全て相続人自身で行うことができます。そのため、遺言執行者は必ずしも選任しなければならないわけではありません。

しかし、相続財産の名義変更や売却などの処分をする際は、相続人全員の名義で行わなければならない手続きも多々あります。遺言執行者がいれば遺言執行者1人でほとんどの手続きを行うことができるので、スムーズに相続手続を進めることができます。

遺言書に相続人の廃除や認知に関する記載がある場合は、遺言執行者でなければこれらの手続きをすることはできません。

何よりも、遺言執行者がいれば相続トラブルの防止にも役立ちます。相続人は、遺言執行者に無断で相続財産を処分することはできません。そのため、遺言書に定められたとおり正確に相続手続を進めることが可能になります。

相続人の中に遺言書の内容に不満を持っている人がいて、相続トラブルが予想されるような場合は特に遺言執行者を選任するメリットが高いといえるでしょう。

まとめ

相続トラブルが予想される場合は、相続に利害関係のない第三者であり、かつ、相続手続に詳しい弁護士などの専門家を遺言執行者に選任するのが望ましいです。

遺言書がある場合で、相続手続に不安がある方は一度、弁護士に相談してみると良いでしょう。