生前贈与のメリットデメリット

2020-03-09

2015年1月からの基礎控除引き下げによる相続税の課税対象の拡大に伴い、注目されているのが生前贈与です。生前贈与をうまく活用すれば、相続税の負担を軽減することができます。本記事では、生前贈与のメリットやデメリットについて紹介します。

生前贈与のメリット

生前贈与にはさまざまなメリットがあります。以下では、代表的な3点について、解説します。

相続税を軽減できる

贈与税は、1年間で基礎控除額110万円までの贈与については非課税となります。この贈与税の基礎控除額を利用して、毎年毎年110万円ずつ繰り返し贈与していくと、一定年数が経過すると、ある程度まとまった財産を贈与税非課税で推定相続人に贈与できます。

贈与税にはさまざまな税額免除・軽減の特例が設けられています。それらの制度を上手に利用して、贈与税非課税又は低額の負担で生前贈与を行えば、相続があるまでに、相続財産を減らすことができ、その分、相続税を節税することができます。

遺産争いを防止できる

遺言書がない場合、相続人間の遺産の配分は、相続人全員による遺産分割協議によって決められることになるわけですが、遺産分割協議は全員の同意が原則なので、相続人の一部がごねた場合、協議がまとまらず、長い間、遺産の分割ができないというケースが出てきます。

そういった場合、最終的には裁判で解決することになるわけですが、相続人間で裁判になると、後に大きな禍根を残すので、できるだけ避けたいものです。そこで、遺産争いが起きやすい重要な財産を、生前贈与によって、相続前に後継者である相続人に渡しておけば、こういった事態に陥ることはありません。

生前贈与のデメリット

生前贈与の最大のメリットは、何といっても高額の贈与税が課税されることです。生前贈与に関する贈与税の特例を利用しない場合、贈与財産の非常に大きな割合が贈与税として徴収されるので、生前贈与のメリットは半減します。

贈与税がかかる

生前贈与の最大のデメリットは贈与税の負担が大きいことです。贈与税の税率は、最高55%です。20歳以上の者が直系尊属から贈与を受ける場合、例えば、贈与財産の金額が4,500万円超の場合、55%の最高税率が適用されますので、贈与財産の半分以上が贈与税として国に徴収されます。

推定相続人に対する生前贈与の場合、贈与税の負担を免除または軽減する各種の特例があるので、実際に生前贈与を行う場合には、これらの特例を使うことになると思いますが、特例を使わない場合、非常に高額の贈与税が課税されるので、生前贈与のメリットは大きく損なわれます。

相続時精算課税制度について

相続時精算課税制度とは次のような制度です。

まず、60歳以上の親や祖父母が20歳以上の子や孫に贈与を行う場合、2,500万円まで贈与税が非課税、2,500万円を超える分については、一律に20%の贈与税を課税します。

そして、この制度によって生前贈与を行った財産については、贈与を行ったものに相続があった場合、その相続財産に生前贈与財産の価額を加算して相続税額を計算し、その結果算定される相続税額から、生前贈与時に支払った贈与税の金額を控除した金額を、相続税として課税します。

この制度を利用すれば、将来の相続における遺産総額が(3,000万円+600万円×法定相続人数)で計算される相続税の基礎控除額以下の場合、最高で2,500万円までは、相続税も贈与税も非課税で生前贈与を行うことができます。

まとめ

生前贈与は、将来の相続税の負担を軽減しつつ遺産争いを防止できる非常に有効な方法です。生前贈与の最大の問題点は、贈与税の負担が大きいことですが、相続時精算課税制度などの贈与税の特例をうまく使えば、贈与税の負担を抑えつつ生前贈与を行うことができます。