
家族信託って何? 仕組みを簡単に説明
2020-02-24
家族信託の制度は一言でいえば、超高齢社会における財産管理をスムーズに行うための制度です。本記事では家族信託について、基本的なポイントをなるべく平易な言葉や具体例でまとめています。
家族信託制度を説明する前に
家族信託という制度について説明する前に、成年後見制度について説明させていただきます。というのは、家族信託のメリットは成年後見制度のデメリットを解消するために利用することが見込まれているためです。
具体例でみていきましょう。
ここに、ご高齢で財産管理についての判断能力が低下してしまったAさんがいるとします。Aさんの息子さんのBさんは、家庭裁判所に申し立てて、Bさんの後見人になりました。
家庭裁判所から後見人に選任されると、BさんはAさんの財産管理と身上監護(身の回りの看護)をすることができます。
この成年後見人の制度を利用すればBさんがAさんの世話をするということで一見、何も問題はないように思えます。
しかし、成年後見人はあくまでも本人の利益になると客観的に認められている行為しかすることができません。例えば、Aさんが老人ホームへ入居し、自宅に帰るということが事実上不可能であると見込まれる場合であっても、Aさんの家をBさんが売却するということは基本的にできません。
Bさんに介護資金を増やしたり、固定資産税を回避したりするなどの目的があっても、基本的にはAさんの家の売却は認められません。なぜなら、本人の家を売却するという行為は客観的には本人の利益にはならないと考えられるためです。その結果、BさんはAさんの財産が固定資産税で目減りしていくのを、指をくわえてみているしかないということになります。
このように成年後見制度では本人の利益(上の例ではAさん)を考えるあまり、現実にそぐわない事態が生じるという問題がありました。また、家庭裁判所が成年後見人として弁護士や司法書士などの専門家を選任してしまうと、毎月Aさんの財産の中からAさんが死亡するまで報酬を支払い続けなければなりません。これらの問題点が家族信託に注目が集まるきっかけとなりました。
家族信託制度の意味
成年後見制度の問題点が次第に浮き彫りになり、家族信託が近年注目されるようになりました。家族信託とは、財産の所有者(先の例であればAさんです)と財産管理をする人(受託者といいます。先の例であればBさんです)との間で、Aさんの財産をBさんが管理するという契約をするというのが家族信託です。
より簡単に言うと、「俺の財産の管理は息子(娘)に任せる!」と一任してしまうという契約です。家族信託は家族に財産を譲ってしまう(贈与)などとは違って、あくまでも管理を任せるというものです。
家族信託制度のメリット
家族信託のメリットは、数多くありますが、上にあげた成年後見制度の問題点との関係でメリットを挙げれば、信託契約で「私(A)の判断能力が不十分となった場合にはBの判断で自宅を売却してよい」などといった形で契約を結ぶことができるという点です。
信託は成年後見のように法律で、出来ること、出来ないことが「カチコチ」に決まっているわけではなく、契約である程度自由に決めることができます。そのため、家族信託契約の内容で柔軟に財産管理を任せることが可能となります。
他の使い方の例としては、例えば、知的障害をお持ちのお子さんがおられる場合、親せきの方などを受託者として、将来の生活に必要なお金を毎月渡すことを頼むといった使い方もあります。
家族信託制度のデメリット
家族信託は、成年後見制度などの現在の法制度の問題点を解決できる可能性がある一方、デメリットもあります。
例えば、信託契約の締結には基本的に専門家(弁護士、司法書士、税理士)が関与しなければ事実上手続きを進めることができず専門家費用が掛かること、契約であるため本人(上記の例のAさん)が判断能力を失ってしまってからは契約を結ぶことができず利用することができないこと、そもそも信託制度が現在進行形で発展しているところでありまだまだ専門家が少ないこと、そのため未知の問題が発生する可能性があることなどがデメリットとして挙げられます。
家族信託制度はまだまだ成長中の制度といえるでしょう。
まとめ
家族信託は成年後見制度の持つ問題点を大幅に軽減するという期待がある一方、未知数な点も多く、研究中といった側面があります。ただ、超高齢社会が進行している中、老後の財産管理の方法としてのメリットは十分に期待できます。