死亡退職金って何?相続との関連性は?

2020-03-16

死亡退職金とは、在職中に死亡したときに配偶者などの遺族に支払われる退職金のことを言います。

死亡退職金は、退職金規程などで受取人として定められている遺族が受け取るものであり、相続財産とは切り離して考えなければならないことに注意しなければなりません。

本記事では、死亡退職金の概要や相続との関連性などについて説明します。

死亡退職金とは

死亡退職金とは、役員や従業員が在職中に死亡したときに配偶者などの遺族に支払われる退職金のことを言います。

なお、退職金や死亡退職金は一般的な会社であれば制度化されていますが、そもそも会社にはこれらを支払う法的義務はありませんし、支払うこととしている場合でも会社ごとにその整理は異なります。

通常の退職金もそうですが、死亡退職金についてもすべての会社で支払われるというわけではありません。

死亡退職金の受取人

退職金制度のある会社では、通常、退職金規程などでその詳細について規定しており、在職中に死亡した場合には誰に支払うのかについても規定しています。

死亡退職金の受取人は、一般的には、配偶者(内縁を含む。)とし、配偶者がいなければ、子→父母→孫→祖父母→兄弟姉妹の順位で決定することが多いと言えます(これは労働基準法において遺族補償を受けるべきとされている者の整理に倣っています)。

つまり、退職金規程などで死亡退職金の受取人を規定している限り、相続の問題は発生しないということです。

民法における死亡退職金の考え方

死亡退職金が相続財産となるのか、また、遺産分割協議の対象になるのかなどは遺族にとって重要な問題です。

民法上、死亡退職金をどのように考えるのかは、退職金規程などで受取人を規定しているか否かで異なります。

退職金規程などで受取人を規定している場合

この場合は受取人の固有の権利が認められるため、死亡退職金は相続財産ではなく、受取人の固有の財産とみなされます。

つまり、死亡退職金は遺産分割協議をすることなく、配偶者などの指定された者が受け取ることができるということです。

退職金規程などで受取人を規定していない場合

この場合は一般的に遺産分割の対象となり、遺産分割協議で誰が受け取るのかを決める必要があります。

この場合の死亡退職金については、相続財産に含むとする説や、各法定相続人の相続分に応じた固有の財産とする説がありますが、いずれにしても誰が受け取るのかを決めなければならないということです。

税法における死亡退職金の考え方

死亡退職金が相続税の課税対象になるのかどうかという点も遺族にとって重要な問題です。

税法上、死亡退職金は相続税または所得税の課税対象になります。どちらの課税対象になるのかは、死亡退職金が死亡後3年以内に支払われたものであるのか、死亡後3年を超えて支払われたものであるのかによって異なります。

死亡退職金が死亡後3年以内に支払われた場合

一般的なケースですが、上記で説明した民法上の整理にかかわらず、相続税の課税対象になります。

死亡退職金が死亡後3年を超えて支払われることはほぼないため、多くの場合はこの整理になります。

なお、受取人の固有の財産とみなされた死亡退職金が、なぜ相続税の課税対象になるのかについては、民法上は相続財産にはならないものの、相続税法上は「みなし相続財産」とされるためです。

死亡退職金が死亡後3年を超えて支払われた場合

稀なケースですが、受取人の一時所得として所得税の課税対象になります。

死亡退職金の支払いがここまで遅くなる例としては、役員の死亡退職金について株主総会での決議がまとまらないような場合が挙げられます。(役員に退職金を支払うためには、株主総会の決議または定款の規定によって支払い額を決定する必要があります。)

まとめ

死亡退職金は民法上の相続財産ではありませんが、死亡退職金が誰に支払われるのかは遺族(相続人)にとって大きな問題です。

万一のことも考えて、死亡退職金が誰に支払われるのかなどを社内規程で確認しておくようにしましょう。